公益社団法人計測自動制御学会 システムインテグレーション部門と ソニーグループ株式会社は Sensing Solution ハッカソン2024 を開催しました。
日本国内の大学生・専門学校生等を対象に、SPRESENSE™ *を利用し、センサーから得られるデータ並びにAI等の技術を活用したシステムインテグレーションにより社会課題を解決する提案、私たちの未来をもっと豊かにするようなエンタテイメント性のある提案等、幅広く募集し、12 月 21 日(土)に審査を通過した15提案のプレゼンテーションがオンラインで行われました。 審査員が驚くような提案がいくつもみられ、楽しく刺激ある大会となりました。
受賞チーム

流体用の小径バルブをSpresenseによってIoT化し、開閉操作および計器類の読み取りを遠隔地からできるようにします。具体的には、取り外し可能な丸型・レバー型・蝶型のハンドル用バルブ回転モジュールを作成、SpresenseのカメラとWi-Fiボードによって撮影した計器の画像をサーバーへ送ることで、利用者にバルブの状態を知らせ、利用者からの操作情報または画像認識によって取得した計器の値からフィードバックすることでバルブの回転操作を行います。
高い評価に結びつく大きな差がでたのは、制御の部分が入っていたところ、バルブをまわす機構を含めフィードバック制御に近いところがあったことは他のチームにはなく、評価されました。実際のニーズもあると思います。あるメーカーから、計測してバブルを操作したい、スイッチを押したい、遠隔で操作したい、という声をきくこともあります。今回の技術は実用性が高く、良く作りこまれている、という点から評価できるものでした。
最優秀賞をいただき、ありがとうございます。一人での開発のため、ハードウェアの面でも、システムの面でも粗いところがあったが、評価してもらって嬉しく思います。今後もハードウェア及びシステムの面から、皆さんの生活を支えるエンジニアになりたいと思います。

近年の異常な夏の暑さは熱中症による多数の死亡者を出しています。特に死亡者の大多数を占める高齢者は加齢によって暑さへの感覚が鈍くなり、高温の屋内でもエアコンを使用せずに過ごしてしまい、当人に暑さの実感がないため政府の呼びかけや家族の助言が届きにくいことが最大の障害と考えます。この問題を解決するために離れて暮らす親や祖父母など守りたい大切な人に贈るエアコン自動制御システムを考案しました。また、災危通報による災害情報の取得で多角的に命を守ることを目標としています。
見守りといった機能だけだと使われなくなってしまう。普段どれだけ使ってもらえるかは、他の機能も大切で、よく考えてありました。AIなどの機能をよく理解して、持っているスペックを十分に使ってくれていました。今回、他の作品でも参考になるところが沢山あったと思います。より拡張性のあるように、さらに進めてもらいたいと思います。
このような賞をいただきありがとうございます。愛着を持って使える部分も力を入れて作ったので、その部分を評価してくれたものもすごく嬉しいです。WatchCatの発展も含めて、さらに頑張っていきます。
特別賞 受賞チーム

災害時において、豪雨や津波・遭難・火災によって避難場所にまで到達できない人の救助は喫緊の課題です。しかし、たとえ救助隊が避難者の避難場所に到着しても、低体温症や怪我により衰弱し、救助が間に合わないケースも多く存在します。さらに、災害時には電力の供給が十分に行えず、被害の範囲が広いために、一般に電力消費が激しく設置費用のかかるIoTを用いた課題の解決は現実的に難しいです。このような課題の中で、インタラクティブにセンシングできるIoT」の必要性があると考えられます。そこで今回私たちは、Spresenseの安価でかつ低消費電力であるという強みを活かしたリアルタイムカルテ作成システム「Carte de Karte」(カルテの地図という意)を提案いたします。このシステムは、人命救助の効率化を図り、一人でも多くの人々を救えるような、ドローンなどにadd-onしても使えるポータブルなIoTシステムです。
災害時の課題解決を的確に捉え、救助者と要救助者をつなげるIoT、 ELTRESの通信とエッジAI技術を使って。新し価値を生み出す、素晴らしいアイデアだったと思います。その視点の素晴らしさを評価しました。今後も学びと挑戦を続けてもらい、この経験を活かし、新しい未来を切り開いてもらいたいと思います。改めておめでとうございます。
このような賞をいただき光栄です。まだまだ粗削りの部分があるので、これから改善を重ねて、もっと良いアイデアにしていければと思っています。

エスカレーターにアンケート要素を追加し、楽しみながらもエスカレーターの安全な利用を促すアイデアです。エスカレーター事故の中で、乗り方不良による割合が突出して高くなっている状況の一方で、現状の事故防止の取り組みとして、機械音声を利用した呼びかけ、注意を促すポスターやエスカレーターへの装飾などがあるが、どれも導入時のインパクトはあるが利用者が慣れてしまうことで長期的な効果は期待できないでいる。エスカレーター事故を防止する新しい提案として、エスカレーターにアンケート要素を追加することで立ち位置が分散され、自然に歩くことができない状態を作り、事故のリスク低減を目指します。
後で受賞チームを選んだ理由の質問をもらうことも多いのですが、審査基準はエンタテインメント的に言うと、IQや知能ではなく、知性やEQで審査しています。その中で、ユーモアのある、エスカレーターにゲーミフィケーションを入れることで態度変容にチャレンジしていることを評価しました。実現に向けてはクリアしなければならない課題は沢山あると思います。それを超えるのは知性で、そこが試されます。応援する意味でもこのチームに決めました。
ありがとうございます。このような特別な賞をもらえて光栄に思います。このまま社会実装となるとまだまだ粗いと感じています。今回の提案を軸に、新しい機能を追加したり、ブラッシュアップしたり、いつか社会実装できたらなと思っている。実際のエスカレーターを使った部分も評価されたと思っている。福岡市地下鉄の協力や、開発をリードした吉本さんにも感謝し、終えたいと思います。

Spresense開発ボードを核とし、固定モジュールと着脱可能モジュールで構成される革新的な自転車用安全システムです。本システムは、ミリ波レーダーセンサーによる後方障害物検知、LED警告灯を用いた進路変更警告、追い越しボタンなどの高度な安全機能を統合しています。検知距離や速度の閾値、感度設定をコアモジュール上で直接行うことが可能、さらに、ユーザーが快適に使用できるよう、使いやすいUIデザインも採用しています。これにより、ユーザーは走行中にリアルタイムで後方の車両を把握し、安全な判断を容易に行えます。本システムは特に日本の道路事情を考慮して設計されており、狭い道路や混雑した都市環境でも効果的に機能します。
おめでとうございます。技術面をもっとも高く評価して選びました。システムのアーキティクチャ―が合理的で、フォームファクターにこだわりがありました。Safety Cocoon(セーフティコクーン)という車の安全を高めるコンセプトがソニーセミコンダクタソリュージョンズにはあります。それともマッチした点からも選びました。
評価いただきありがとうございました。安全で快適な自転車利用を目指して開発しました。この受賞を励みにさらに技術を磨き、社会に貢献できるよう、努力していきたい。本日はありがとうございました。

今日にいたるまでの長いみちのりであったと思いますが、一つの区切りを迎えたと思います。最優秀賞、優秀賞、特別賞の皆さん、受賞おめでとうございます。当初、昨年度に比べ提案件数は増えましたが、質はどうなるかを心配していました。実際は、一つ一つの作品の完成度は高く、審査も難航する高いレベルとなりました。作品自体がそれぞれしっかりできていた中で、どう自分たちの作品をアピールできたのかも受賞の分かれめにつながる部分だったとも思います。IoT技術を活用して幅広い分野でSpresenseをどう適応していくのか、知恵を絞ってソリューションを提案してもらうという主旨で進めてきました。こちらの狙いに沿ったかたちで、きちんと答えを出してきてくれたのは非常に喜ばしいことでした。本日で終わりにせず、審査員のコメントもふまえて完成度をあげ、成果をオープンし、他の人にも作ってもらえる環境を整えながら、一人一人、エンジニアリング力の向上に励んで欲しいと思います。
公益社団法人計測自動制御学会 システムインテグレーション部門 部門長 平田 泰久
システムインテグレーションは色々なものを結合させ新しい仕組みを作る、システムを作るというものになります。色々なシステムを組み合わせて新しいものを作り、イノベーションを起こしていくという事が非常に重要になっていきます。みなさんの熱い思いのこもったシステムの提案に非常にワクワクさせられました。
ソニーの技術の顔であり、技術戦略の策定や、技術者の成長支援を行うミッションを持っているDistinguished Engineerが私を含めて4人、実行委員として参加しており、一部チームには提案に対するメンタリングを実施し、学生さんと直接コミュニケーションする機会もありました。このイベントを通して、今後の研究における多くの気付きが得られる有意義な機会になることを期待しています。
* SPRESENSEおよびロゴは、ソニーグループ(株)またはその関連会社の登録商標または商標です。